大企業の96%が、OSSが自社組織全体のインフラとして戦略的に重要になっていると回答~改めてOSSの運営を考える~

OSS

吉政忠志

20年前、OSS(オープンソースソフトウェア)は業務に使えるレベルにないと考えられていましたが、現在では企業の96%がOSSが戦略的に重要だと認識しています。特にクラウドの進展により、無料のLinuxが大いに普及しました。しかし、OSSの利用者は、そのメンテナンスがちゃんとされているか確認するべきです。特に、クラウドやリモートワークが主流の今日、「動作確認されていないアドオンプログラム」が不具合を引き起こす可能性があります。実際、世で広く使用されているWordPressの60%がバージョンアップされていないという状況です。経験者の管理が必要なOSSですが、高い技術力を持つ会社に保守を委託すべきでしょう。

気が付けばOSSのビジネスに携わって20年を超えてしまった。20年前といえば、OSSはおもちゃとという人がいるくらいに、貧弱で業務には使えないものという印象があった。OSSのビジネスにかかわる前は、SAPという世界一のERPの会社でマーケティングと営業を担当していたこともあり、Linuxの会社に転職しようとした私に対して、多くの先輩が「OSSは失敗するからやめた方がいい。」と止めたくらい、当時OSSが普及するとは思われていなかった。

あれから20年たち、OSSはコミュニティによるソフトウェアの成長、ソースコードの共有、ライセンス料金無料という基本的な思想を変えずに成長してきた。特にOSSはクラウドの普及による市場拡大が大きいと思う。昔のサーバーOSはオンプレミスのサーバーの上で構築されていた。その時点でお客様はサーバーとセットで購入するスタイルが一般的だったので、サーバーOSが有料でも問題がなかったのだ。クラウドが普及すると、クラウドサービスプロバイダーは顧客獲得のために、クラウドサービスをお試しで提供するようになった。その際のOSは無料のLinuxでないと、お客様に無料で使用させられないので、お客様がLinuxに触れる機会が増えた。またクラウドの利用はWebサイトから始まったので、Webに強いLinuxがより一層普及を強めたのだ。そして、Linuxの上で動くソフト位ウェアも同じ理由でOSSが多かった。色々な考えがあるとは思うが、私はOSSの普及にはクラウドが一役かっていると思う。

そして、業務で使用するシステムもクラサバからWeb系のシステムが主流になっていった、この波にもLinuxなどのWeb系のOSSがよく使われた。もはや、OSSを使用していない企業を探すのが難しいようなくらいにOSSは普及している。そして、今回紹介する調査データを見ると「大企業の96%が、OSSが自社組織全体のインフラとして戦略的に重要になっていると回答」あるではないか。調査データ(*1)によると大手企業は従業員1千名以上を指すようだ。その大企業の96%がOSSが戦略的に重要であると回答している。OSSのビジネスに長年かかわっているものとすればとてもうれしいことではある。

*1 エンタープライズでのオープンソースソフト導入が加速
https://japan.zdnet.com/article/35149886/?fbclid=IwAR3hKFa9GFQ24onUdVmShqB6doA5ER4duNjkLF94CXuHKlUucHcFr58ocaA

ここで、このコラムの一番言いたいことを述べる。OSSが普及することはとてもいいことなのだが、使用しているOSSはきちんとメンテナンスされているだろうか。社内からしかアクセスできないクローズドな環境でのOSS利用であれば、メンテナンスが多少おろそかでも問題はないかもしれないが、今はクラウドが主流の時代であり、テレワークやリモートワークを想定してシステム作りが求められる時代である。当然、OSSはしっかりメンテナンスされているべきなのだが、実はクラウドが提供しているOSS部分までしかメンテナンスしていないなんてことはないだろうか。

全世界のWebサーバーの8割でPHPが稼働している。全世界のWebサーバーの1/3でWordPressが稼働している。PHPやWordPressはきちんとメンテナンスされているだろうか。WordPress.orgが公開している資料によると、6割しかバージョンアップしていないようだ。

出展:統計情報|WordPress.org

メンテナンスしていないソフトウェアは格好の攻撃対象になってしまうため、やはりしっかりメンテナンスをした方がいい。

基本的に多くのソフトウェアがそうなのだが、動作確認は下位確認である。下位確認というのは、例えば、WordPressの場合は、WordPressが動作するOSに対する動作確認であり、WordPressと共存するソフトウェア(水平的確認)やWordPress上で動作するテーマやプラグインの様な上位確認は行わないのだ。OSSの特徴として、普及したOSSには大量のアドオンプログラムが発生することが多く、OSSを効果的に活用するにも有効なことが多い。但し、これらのアドオンプログラムはアドオンプログラム同士で動作確認をしない。また、それぞれのソフトウェアが頻繁にバージョンアップするのでまれにアドオンプログラム同士が競合して動作不良を起こすことがあるのだ。 WordPressのケースで言えば、テーマやプラグインは万単位で存在し、それぞれに動作確認はされていない。動作確認がされているのは動作するWordPressに対してのみだ。WordPressの経験ができてくると、「このプラグインとこのプラグインは競合しそうだな」などとわかるし、精通した技術者であれば、プログラムを修正して対応できることもある。

つまり、OSSを活用する際は経験者が必要なのだ。経験が少ない人が管理する際は、前例がとても重要なのだ。(メジャーなテーマとプラグインを組み合わせ使う場合は、前例も多く問題があまり起こらない) 法人として使用する場合はやはり保守を技術力が高い会社に委託した方が良い。

最後に宣伝になるが、このコラムを掲載いただいているプライム・ストラテジーは国内のWordPressトップベンダーである。以下のような特徴のあるサービスも展開している。興味があれば見てほしい。

・他社が開発、カスタマイズしたWordPressも保守可能
・クラウドからOS、WordPress、テーマ、プラグインなどもワンストップでのマネージドサービスを提供

実力がなければできないレベルのサービスだと思う。興味がある方は以下のページも見てほしい。

https://www.prime-strategy.co.jp/services/

関連記事

Webサイト運用の課題解決事例100選 プレゼント

Webサイト運用の課題を弊社プロダクトで解決したお客様にインタビュー取材を行い、100の事例を108ページに及ぶ事例集としてまとめました。

・100事例のWebサイト運用の課題と解決手法、解決後の直接、間接的効果がわかる

・情報通信、 IT、金融、メディア、官公庁、学校などの業種ごとに事例を確認できる

・特集では1社の事例を3ページに渡り背景からシステム構成まで詳解